君 消毒液 心 首 ポタリ
果実を齧った跡
それは君の体の放物線
僕の薄汚れた指で湾曲した君をなぞる
「綺麗だね」
その言葉がビロードのような波となって
私の脳内を無口なドーパミンが駆け巡る
泣きたいような
蜜の甘酸っぱさが切なく
唇を強く結ばせた
「綺麗だよ」
君はまたさらさら柔らかい膜を
重ねていく
その言葉に私は目を細めた
私の脳にはなにも映らない
ただ、君が私にもたらした
泣きそうなとろとろのビロードに包まれて
その時 深く 深く
地下層へ身を落としていった
今だけでいい
この柔らかな とろとろの 蜜に覆われた
世界 で 身 を滅ぼしていたい
この一瞬 が 私の 居場所
今も世界は平常に回っていて
僕1人が正常な世界から抜け出したって
初めから異質な僕が逸脱しただけで
世界はなにも変わらない
事実も正義もいつもどおりだ
椿の頭が落ちるように
人間の心が死んだって
誰も気づきやしない
結局ぼくは深海からは抜け出せないのだな