灰色の中で猫が路地に消えた繊細の行方。



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朝・夜関わらず、世界が薄暗い色の時が好きだ。










アールグレイを求めて近場のコンビニへ行こうとして、映画を観ていたら夜が明けそうな時間になっていた。







丁度いい薄暗さを見計らって、着替えて、皿洗いをしていた。帰ってきたらすぐ米を研げるように。








外に出ると、雨上がりの路面が薄く乾き始めていた。

夜明けの中でも雨上がりは1番ひんやりとしている。










6時過ぎだろうか、こんな朝早くでも(私にとっては朝早い)人々は行動を開始していて、何人もの人とすれ違った。












積み上げられていた雑誌の上に「繊細な人」の文字が印刷された本が乗っていた。

青い文字。興味を惹かれる。






夜明けの灰色の世界に「繊細」が捨てられていた。















いつもの理髪店を通り過ぎる。







過ぎゆく家々は、明かりが灯っている部屋もいくつかあった。

オレンジ色の薄い部屋(起きているのか寝ているのかわからない)、窓際に服の黒い影が見える部屋、、そんな人の呼吸が見える四角い景色が好きだ。

まるで生の絵画を見ているような気持ちになる。








結局、夜明けに巣から這い出てきたものの、コンビニにはアールグレイは置かれていなかった。




まぁ、朝の散歩として

悪いことではない、と店を出た。





帰り道に「繊細」は消えていた。












よい肉付きをした灰色の猫が前を足早に横切って、マンションの横の狭い路地へ姿を消した。


何度も振り返って、姿は見えぬものかと見てみたが、路地は表情を変えず、路地だった。











大通りの横断歩道。歩行者の信号の赤いライトが赤い水溜りのように反射しているのを見ていた。


緑に変わるのを見ていたら、隣のおじさんが少し振り返りながら私を追い越して前を歩いていった。











空が白み始め、朝が駆け足で迫ってきた。



私は明るいのは嫌い、という程ではないが、薄暗いのが好きなので、朝に追いつかれないように朝から逃げた。








早く帰って、熱い飲み物をマグに淹れて飲もうと、ぴりりとする冷気を浴びて家路に着いた。








2021/01/13