フラニーとレーン



サリンジャー村上春樹訳の『フラニーとズーイ』は「ズーイ」の兄の手紙を読んでいる。



「フラニー」が予想以上によかった。



好意を持っている相手で、確かに相手を少なからず好いている。


しかし、その相手との意見の相違がどうしても溝になる。



気持ちのいい会話じゃない。


このフラニーとレーンの2人の会話を見ていると、きっと2人は以前からこの違和感を感じながらも「自分は相手のことが好きだ」という思いがあったんだろうと感じる。





経験上…経験上。




好きな気持ちに嘘はないが

価値観の違いが明白にある。




対立する、もしくは反対の意見を持っているのにフラニーが妥協してレーンに話を合わせる(もしくは発言の後に謝る)ことが以前からあったのではないだろうか。





レーンのような男は存在していて、魅力的に写ると思う。

最初は。

彼の話方を見ているとこの男についていける女は、話をずっとしていられる女はいないんじゃないだろうか、と思ってしまう。






好きになってしまったら、好きでいたいという気持ちも、離れ難くなる気持ちも湧いてくる。好きという感情が少なからずあれば、別れ難い。



しかし、この違和感を抱き続け、付き合っていられるか。残念ながらハッピーエンドになる確率は低い。






この、好意を抱きながらも拭えない違和感や気持ちの良くない会話がすごく現実的で共感できて他の本であまり読むことがなく、とても好きだ。




「ズーイ」のこの先も楽しみだ。























君の吐いた木蓮が目隠しして

君の目は虚像を捕らえる

深い古代湖を写す球体

呼吸も時間も空気も停止して

君の睫毛だけが眼前の絵画震わす




窓の向こうは別世界で

2人だけの箱に入って湿度が重い

微熱と麻痺した思考の断片

君を見つめるだけに存在する

ぼくの眼球





ぼくの眼球を君が食べてしまったから

ぼくは君を指先でしか感じられない



君はそんなぼくを見下ろし

嗤う











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